「書いた文章が論理的破綻している・・・」
自分や他人が書いた文章を読んでいても、論理が破綻していると説得力もなく読者を満足させることはできません。
論理的な文章を書きたい人にぜひ覚えてほしいのが、「帰納法(きのうほう)」です。演繹法(えんえきほうと)並び、ロジカルシンキングの基本中の基本とされるこの考え方について、例を挙げながら解説していきます。
帰納法とは
帰納法とは、
「いくつかの事例や情報をもとにして、ひとつの結論を導き出す方法」
です。
例えばあるツールを導入するかどうかのプレゼンテーションをするとき、
- 競合他社もこのツールを導入している(競合の情報)
- このツールを導入すると◯◯の理由により仕事のパフォーマンスが上がる(パフォーマンスの情報)
- このツールを導入すると◯◯円のコスト削減が予想できる(コストの情報)
- 今後このツールは業界の標準になっていく(業界予測の情報)
→ よって、このツールを導入すべきである(結論)
のような形の主張は帰納法といえます。
「いろいろな視点の情報や事例からみて、この結論がベストですよ」
と言われると、たしかに納得しやすいですね。
では、「帰納法は完璧か?」と言われると実はそうではありません。次の項からは、「帰納法の落とし穴」についてみていきましょう。
帰納法の落とし穴
帰納法の落とし穴は、「情報収集の段階」にあります。
先に挙げた「あるツールを導入する場合」を例にすると、
とありますが、それは果たして本当でしょうか。もし、「◯◯の場合はコスト削減できるが、自社の場合は違う」といった可能性はないでしょうか?
また、「競合他社もこのツールを導入している」とありますが、それは「競合他社が10社いるうちの1社だけ導入している」といった可能性はないでしょうか?「パフォーマンスは上がる」だけで、下がる可能性はないでしょうか?
さらに言えば、「今後このツールは業界の標準になっていく」とありますが、人には完璧な未来予測はできません。
これらのことを挙げて、以下のような結論を導き出すこともできます。
- 競合他社でこのツールを導入しているのはわずが1社にすぎない(競合の情報)
- このツールを導入すると◯◯の理由により仕事のパフォーマンスが下がる可能性もある(パフォーマンスの情報)
- このツールを導入するしても、我が社がコスト削減ができる可能性は低い(コストの情報)
- 今後このツールは業界の標準になっていく可能性は低い(業界予測の情報)
→ よって、このツールを導入すべきではない(結論)
最初とは真逆の結論になりました。
このように、帰納法は「結論を導き出すための情報や事例の内容が、情報収集する人によって大きく左右される」という落とし穴があるのです。
帰納法の落とし穴はどう回避する?
「じゃあ、情報を全部集めればいいの?」
と思いがちですが、その手間や情報の数を考慮すると現実的ではありませんし、人によって情報を取捨選択するためどうしてもある程度の偏りは出てきてしまいます。
帰納法の落とし穴にハマってしまわないために、以下の3つは意識するようにしてください。
情報収集は「フレームワーク」を使う
フレームワークとは「物事の見方・捉え方の指標」です。
まったく穴のない完璧なフレームワークは存在しませんが、「ポイント・キーとなる情報はどれか」に当たりをつけるときには活躍してくれるでしょう。
ビジネスシーンで有名なものだと「ファイブフォース(競合他社・供給業者・顧客・代替製品・新規参入)」や「4P分析(商品・価格・流通・プロモーション)」などがあります。
情報は「メリット・デメリット」の両方を集める
「自分にとって都合のよい帰納法」にならないために、情報はメリットとデメリットの両方を集めるようにしてください。
メリットとデメリットを比較したうえで実行する戦略と、メリットもしくはデメリットしか知らないで実行する戦略には雲泥の差があります。
早く形にし、小さく始める
いくら論理的に完璧なものでも、実際にやってみないことには結果は分かりません。
ツールであれば「お試し期間」、製品であれば「少数作ってのテストマーケティング」といった具合に、なるべく早く形にし、小さく始めることが大切です。
まとめ
帰納法は論理的な考え方や文章構成をするうえで有効な方法です。
ただ、そもそも情報収集に問題があると、結論が大きく歪んでしまうため注意してください。
フレームワーク、メリット・デメリット、そして早く形にして試す、この3つのポイントは常に意識しておくようにしましょう。