※初めに
この記事は今年2018年5月に作成されたものです。梅雨をテーマにしたものですが引くほど速い梅雨明けだったため、時間経過的に「ん?」と思う部分がありますが、脳内を6月にタイムリープしたうえでご拝読ください。加えて7月に発生した西日本豪雨で亡くなられた方にご冥福と被害に遭われた方々と被害に関わる全ての方たちに、心よりお見舞いの気持ちを申し上げます。ささやかながら寄付もしました。
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皆さんまた会いましたね。
たつみそうきち(@tatumisoukiti)です
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僕がいま、どこにいるか分かりますか?
ここは埼玉県にある首都圏外郭放水路の一部で、「地下神殿を思わせる」と言われるほどの大きな柱が59本もある、長さ170M、幅78M、高さ18Mもある「調圧水槽」という大きな地下室です。多くの映画やドラマの撮影にも使われているので、メディアで見たことがある人も多いのではないでしょうか?
なぜここにいるのか?何をしに来たのか?お尻は前と後ろ、どちらから拭くのが正しいのか?
みなさんが当然抱くであろう謎を解くため、あと1スクロールほどお付き合いください
皆さんは梅雨は好きですか?僕は「テラ」が付くほど嫌いです
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だってまだタヒチでバブル期の社長ごっこもやってないのに、降りすぎた雨のせいで浸水や洪水が起きるかもしれないんですよね?
嫌だ!洪水は嫌だ!!
梅雨の準備をいくらやっても不安で不安で眠れやしない!
しかし自然災害という大いなる力の前では、ひと一人の力など焼け石に水。だからと言ってこの不安、ただ指をくわえて見てるだけで解決するでしょうか?いいえしません
「ん~・・・じゃあ・・・先生と組もうか?」
ってのと同じくらい何の解決にもなりません
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というわけでそんな不安をなくすため「首都圏外郭放水路」にやってきたのです
首都圏外郭放水路ってなに?
埼玉県東部の地下50Mにある全長6.3kmにも及ぶ日本最大、そして世界最大級の治水施設です
深いっしょ?んで長いっしょ?
先に言っちゃうと、めっちゃすごかったんですよココ。
首都圏外郭放水路の見学の前に知っておこう
その前に「治水って何?」という人の為に。
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洪水や浸水が起きないようにする工事全般の事です。具体的に言うと川の堤防や貯水池を作ることも、治水の一つです。いい子のみんな、わかったかな?悪い子のみんなも知っとけよ!こんにゃろう
だが。
ここ首都圏外郭放水路は堤防や貯水池なんてレベルの治水施設ではないのです
なめんなよ
端的に言うと
「めちゃ川あふれやすい場所なのに市街化が進んで洪水被害対策がしにくいから、いっそのこと地下に穴とトンネル掘って5本の川から水があふれる前に、地下を通して別の川に持って行っちゃおうぜ施設」なのだ!
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とても分かりやすい全体像
発想の大胆さ 西郷どん級くね?
見学会のスタート
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首都圏外郭放水路はマジで半端じゃない規模の治水施設なので、予約制の見学会を開催してくれています。見学会のスタートは施設の一部であるこの「龍Q館」から行われるよ!
見学会のメイン、「調圧水槽」の見学が最後にある!
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龍Q館の2階で受付を済ませたら、必要な注意事項を読んで開始を待ちます
「ウエストが1m超えのヤツは見学禁止」という注意事項はなかったから、僕も見学できるようです!
ああ良かった!
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受付場所すぐ横にはこの施設のコントロールルームがあり、ここも映画の撮影に頻繁に使われています
たくさんのモニターのうち、一個くらいモスラとか映ってねえかな
まずはビデオ視聴だ!
見学会は首都圏外郭放水路ができた経緯や、概要を知ることが出来るビデオを見ることから始まります
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画像に龍が映っているのは、施設のある春日部市には「龍が災害から人々を守る」という伝説があり、地下にある長さ6.3kmのトンネルを龍に例えているからなのです。だから「龍Q館」なんだね!(「Q」はどっからきたんだ)
首都圏外郭放水路 完成までの歴史
簡単にこの施設ができた経緯を解説しましょう
- 中川・綾瀬川流域は水が非常にたまりやすい地形である
- しかも傾斜が緩やかでたまった水がなかなか無くならない
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高校を留年しかけた僕でもわかる水のたまりやすさ
- そのうえ急激に都市化が進み、洪水被害対策が追い付かない

赤いのが市街地化したところ。10倍以上に広がっている
- つまりこの土地の水害耐性レベルはヤムチャ級である
- 実際に浸水被害が何度も何度も起きている
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川か道路か分からないくらいの浸水がめっちゃ起きてる
- このままじゃマジやばい!どうする!?
- そんな流れで平成18年に完成したのがこの施設なのだ!
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とても分かりやすい施設の仕組み
- 完成してからは年に7回ほど稼働し、浸水被害を大幅に軽減している
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英語で100点満点中4点取った僕でもわかる違い
詳細な解説を聞こう!
ビデオ視聴が終わると係の人が、スピーカーを使って具体的な解説をしてくれます。
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床に貼られた巨大な地図を使って、川から水を取り込む立坑(たてこう)の場所などを説明してくれます。(立坑の説明は後ほどするよ!)
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模型と本物の水を使って、首都圏外郭放水路の稼働の解説もあります
稼働の概要
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- 5本の川が増水し始める(大落古利根川、幸松川、倉松川、中川、第18号水路)
- それぞれの川から4つの立坑に増水した水が流れてくる(第三立坑のみ二つの川を担当)
- 地下のトンネルを通じて江戸川近くにある第一立坑を通り、調圧水槽に水が集まる
- 強力な排水ポンプを使って、たまった水を江戸川に排出する
首都圏外郭放水路のすごいところ
すごいところだらけですが、見学した僕が「すごすぎて、むしろ馬鹿なんじゃないだろうか」とまで思った点を紹介します
川から水を取り込める立坑がめちゃくちゃでかい
さきほどから何度も出ている立坑というのは、川から水を取り込むための円柱の形をした穴です
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五つの立坑がある。穴だけどコンクリで固められてるよ。第一立坑だけ川からの取り込みは行わない
この立坑、大きさは5つそれぞれ少し違いますがとにかくでかい!
深さ70M、内径50Mもありスペースシャトルや自由の女神がすっぽり入る大きさだそうです
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スペースシャトルも自由の女神も見たことがない僕には1ミリもピンときませんでしたが、とにかくでかいという事です!!
着工から完成まで13年かかっている
13年ですよ!?なんと気長な。
この説明の時、僕は
「この工事の為に妊娠中の妻を残して単身赴任した人がいたら、完成して家に戻るころには子供はすっかり中二病の中二なんだろうな」とか考えてました
トンネル工事で出た地下の土は、江戸川の堤防に再利用している
素晴らしい・・・
江戸川は5本の川の水を一人で受け止めてくれてるわけですから、その分負担が大きいんです。それで江戸川が増水して氾濫したら元も子もないですからね!
いわば宴会で余った会費を、幹事がもらうようなものですね!
・・・例えが間違ってても謝りませんので次に行きましょう
江戸川に排水するポンプのパワーがものすごい
増水したそれぞれの川から集まった水を江戸川に排水するためには、地下にある水を地上に持ち上げなければいけません。そのために使われている巨大ポンプのパワーがものすごいのです。
さっきから「すごい」とか「めちゃくちゃ」とか語彙レベルがウンコなので具体的に言うと、4台あるこのポンプをフル稼働させると25Mプール1杯分の水を、なんと1秒で江戸川に排水できるのです!
怖え
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排水のためのガスタービンは航空機用のものを改造した非常に強力なもの
2300億円かけて作られている!
くれ
見学会のメイン 調圧水槽へ
龍Q館での大まかな解説が約30分ほどで終了し、いよいよお楽しみの調圧水槽へ行く時間です!

調圧水槽への入り口は龍Q館から歩いて行ける距離にあり、階段を降りて行きます。このためにちゃんと汚れてもいい歩きやすい靴で来ましたよ!
約100段の階段を降りると5分とかからずに、いよいよ調圧水槽に到着です
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すんげ。
写真でお伝えするのは限界があるから、絶対に生で見たほうがいいと感じるほどすごい場所です。見学できる範囲は制限されてますが、調圧水槽全体はかなり広くて僕の住むアパートが数十戸は余裕で入る大きさでした。
ここに住みたい
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「地下神殿」と言われるのもうなずけるほどの大きい柱です。日が当たらず、地下であるせいもあって思ったより気温が低く、この涼しさも「神殿」を思わせる一因かもしれません。
出来てからまだ12年しかたってないのに、神秘的な感じがすごくします。座敷童とかが50人くらい出ても驚かないと思う。というか出てほしい。
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係の人の説明によると、見学の為に定期的に調圧水槽を掃除するための機械を、地上から入れて掃除しているそうです。確かに歩く範囲には泥や土砂はまったくありませんでした。
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調圧水槽から見られる第一立坑と、掃除のための機械が落ちないようにするための車止めもあります。
写真で見えている第一立坑は実際の三分の一程度で、見えてる範囲の二倍分の深さが下に続いています。(車止めのところまでしか見学ができなかったので見られませんでした。残念!)
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柱には江戸川に排水を開始する目安になる目盛りと、ポンプを止める目盛りがあります
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実際に水がたまった調圧水槽の写真がありました。見学者の小ささを見ると部屋がいかに大きいのかが、わかる
調圧水槽の見学は10分間だけでしたが、人類の叡智が結集された施設の迫力を感じるには、充分な時間でした
首都圏外郭放水路見学の感想
想像していた以上にとんでもなく巨大な施設でした。ここは土木技術の発展に顕著な功績をなしたとして、平成14年に土木学会から技術賞を受賞されています
この首都圏外郭放水路は世界的にも注目を集めており、ハリケーンの多いニューヨークの洪水対策として2012年にCNNで「将来の自然災害に対処する新たな技術を与えてくれるかもしれない」と紹介されたこともあります
梅雨への不安から訪れた施設でしたが、日本の土木技術のすごさと誇らしさを感じられた施設見学でした
こんなに頼りになる施設があるなら、梅雨が来ても心配などすることなく、安心してぐっすり眠ることが出来ます!
いやー良かった良かった!!
見学を終えて
龍Q館の前には地下トンネルを掘ったときに使用された、シールドマシンの面盤が置いてあります
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トンネルと同じ大きさなのでもちろんでかい
よーく見ると・・・
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時計のように数字が配置されてるんですね
「おー日時計として置かれてるのか。粋なことするなー」
「どれどれ。真ん中の針の影は、いま何時を指して・・・」
と思っ・・・・
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気になって眠れなくなりました
誰か助けて下さい
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